フリー忍者と事務員。
「あ、利吉さん。おかえりなさい」
「ああ、ただい……は?」
満面の笑みで迎えられて、一拍気づくのが遅れてしまった。
この青年は時として、理解不能の言葉を吐き出す。
「何で“おかえりなさい”なんだい?私は部外者なんだから、“いらっしゃい”の間違いだろう」
「え?でもここには山田先生がいらっしゃるでしょう?」
マニュアルを遵守するしか能のない、役立たずの事務員が、不思議そうに私を見上げた。
「山田先生は、利吉さんのお父さんじゃないですか」
それで答えになったとでも言うように、小松田くんはにこやかに笑う。
まるで意味が分からない。
「確かに山田伝蔵は私の父だが。私が学園の部外者であることに変わりはないだろう?」
冷やかに言ってやると、小松田くんはブンブンと首を振った。
「そんなの関係ありません。“ただいま”を言うのは、そこが家だからじゃなくて、家族がいる場所だからでしょう?だから――――おかえりなさい」
―――ああ、まったく、この人は。
どうして普段鈍いくせに、変な所でこうもアレなんだろうか。
まぁ…小松田くんだから仕方ない、か。
「……ただいま」
ちょっと嬉しい、なんて、言わないけどね。
*****
「おかえり」って地味に嬉しい言葉だよなー、と思って書いた…ハズ。(記憶があいまい笑)
たぶん小松田くんは鉢屋あたりにからかわれたのを鵜呑みにしただけです。
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